【今週の眼】太田聰一 慶応義塾大学経済学部教授
おおた・そういち●1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

大学の経済学部は長らく男子学生の比率が圧倒的に高かったが、徐々に女子学生が増えつつある。文部科学省の統計によると、1996年に商学・経済学関連学科に在籍している女子学生の比率は全体の18%にすぎなかったが、2016年には29%に大きく上昇した。

背景にはもちろん女性の大学進学率が上昇したことがある。この20年間で男子学生の数は9%減少したが、女子学生は42%も増加した。これは従来、短大に進学していた層が大学に入学するようになったことが大きい。女子学生が大学に進学する際に、就職で有利な学科への選好を強めていることも影響しているのだろう。

女子学生の変化は、大卒就職率の動向にも表れている。たとえば20年前には、女子学生の就職率(進学者らを除いた卒業者に占める就職者の割合)は約7割で、男性に比べて10%ポイントも低かった。しかし今では、就職率の男女差はほとんどない。近年、企業が新卒採用を積極的に行っていて、就職率の男女間格差が生じにくくなっているという側面もあるが、以前に比べて正社員としての就職を強く意識している女子学生が増えてきていることも間違いないだろう。

こうした変化は、能力の高い女性が社会で活躍する場が広がっていることを示唆しており、歓迎すべきものだ。しかし、子細に見るとそう楽観できない面もある。それは、女子学生だけが就職時に直面する総合職と一般職の選択の問題だ。一般職を選べば、転勤がなく定時に帰宅できるために育児などとの両立がしやすい一方で、給与水準はその分抑えられる。総合職の給与水準は高いものの、転勤や残業があり、家庭との両立が容易ではない。これに悩んだ末に能力が高く、仕事への意欲が強い女子学生でも一般職を選ぶ状況が生じている。これは、潜在的に貴重な労働力の大きな損失である。

一方、男子学生は総合職を選ぶのが当然視されており、そうした悩みは少ない。これは家事・育児をもっぱら女性が担うのを当然とする性別役割分担意識が生み出す男女間の不平等であり、働く意欲のある女性の能力活用を初期段階で阻害する問題になっている。