9月8日、北京市内の表彰大会に出席した王岐山氏。同氏の19大での進退が注目を集めている(Avalon/時事通信フォト)

第19回党大会に向け、中国に政治の季節がやってきた。定年ルールを見直すなどして、習近平国家主席が「3期目」の座に就くための布石を打つのかどうか、中央規律検査委員会のトップとして反腐敗キャンペーンの矢面に立ち、習氏の「右腕」といわれてきた王岐山氏の去就はどうなるのか、といったことが日本のメディアでの主な関心事となっている。

さて、その王岐山氏によって主導されてきた反腐敗キャンペーンは、これまで周永康氏や徐才厚氏といった「大物(虎)」から、地方の役人(ハエ)に至るまで、全国で119万人が処分されたといわれており、汚職のぬるま湯につかっていた官僚や党幹部たちを震え上がらせてきた。今年7月には、一時は習氏の後継者の有力候補といわれていた重慶市党委員会書記の孫政才氏が突然解任されたが、背景に夫人に関する不正腐敗事件の可能性がささやかれている。

このように「権力闘争」のイメージが強い反腐敗キャンペーンだが、経済活動にはどのような影響を及ぼしたのか。実はその効果を数量的に明らかにしようとする研究が、経済学の専門誌にこのところ相次いで発表されている。

反腐敗キャンペーンの効果の分析は、これまで医療や疫学の分野で一般的だった、統計的因果推論という手法を用いて行われることが多い。反腐敗キャンペーンは開始された時期が明確に定義でき、また官僚の摘発数など、その成果について地域ごとにはっきりとした差が出ている。この条件を利用して、キャンペーンを通じた汚職摘発の強弱がその地域の経済パフォーマンスにどのような影響を与えたのか、一種の「政策実験」として、その効果を数量的に評価する研究が盛んに行われているのだ。

日本の研究チームもこのような研究に積極的に参入している。たとえば、京都大学の矢野剛教授と同大学大学院博士課程の徐剛氏が著名な学術誌『ジャーナル・オブ・コンパラティブ・エコノミクス』に発表した論文では、汚職官僚の摘発件数などを反腐敗キャンペーン実施の代理変数とし、それが企業の生産活動に与える影響を数量的に分析している。