9月中旬に開催された「ビアフェス横浜」。雨の中、多くの参加者が集まった(撮影:尾形文繁)

「乾杯!」──。9月中旬、横浜港大さん橋ホールで「ビアフェス横浜」が開催された。司会の掛け声に合わせて、数百人の参加者が上機嫌でグラスを掲げた。

グラスを満たすのは、全国から集まった100種類以上ものクラフトビールだ。

クラフトビールとは、小規模な醸造所が製造するビールのこと。法律上の定義はないが、大手のビールに比べ、味や香りなどで個性を出しやすいことが特長だ。

ビール全体の課税数量は1994年度をピークに、2015年度は6割減の273万キロリットルにまで減少。一方で、クラフトビールの市場規模は推計で1%にも満たないが、数十社が新規参入し、15年度に2.3万キロリットルと、拡大が続く。

たとえば、新興クラフトビールメーカーのファーイーストブルーイング(渋谷区)は12年に参入し、15年8月期に売上高が1億円を突破。17年8月期も前年比40%増の数字を記録した。

実はこうしたブームを牽引しているのは、94年の酒税法改正による規制緩和で参入した、かつての地ビールメーカーだ。

業界最大手は96年創業で「よなよなエール」を販売するヤッホーブルーイング(長野県・軽井沢町)。売上高は非公表だが、信用調査会社によれば15年11月期に30億円程度だったようだ。

ヤッホーの井手直行社長(左)は、主力商品の刷新で数量拡大を狙う

ヤッホーは14年にキリンビールと資本・業務提携をし、翌年3月から一部ビールの製造を同社に委託。その分、自社工場に生まれた余力で既存製品の改良や新製品開発に注力している。9月には初めて、よなよなエールを大規模に刷新した。

香りをより際立たせたことに加え、缶前面の記載を「香りのエールビール」から「クラフトビール」に変更。井手直行社長は、「数あるクラフトビールの中の代表として選んでもらいたい」と狙いを語る。

同じく96年から「常陸野ネストビール」を製造販売する木内酒造(茨城県・那珂市)は50カ国に輸出し、海外販売比率は約5割に達する。協同商事(埼玉県・川越市)も「コエドビール」を12カ国に輸出している。

こうしたかつての地ビールメーカーが、大手メーカーと提携したり、海外輸出へ舵を切ったりするのは、ビール製造は量がモノをいう装置産業にもかかわらず「国内で売り先を確保し続けるのが難しい」(酒文化研究所の山田聡昭氏)という構造要因があるからだ。