仕事場を移動して3カ月。ようやく本の整理が済んで、気持ちも落ち着いた。敬老の日に区主催の行事に名誉区民として呼ばれ、80歳になった老人たちに励ましの言葉を差し上げた。私は人生を起承転結と考えず、“起承転々”だと思っているので、最後の「転」も一日一日の生命に感謝し、手を抜かずに生きましょうと話した。転というのは転がり落ちるということではなく、悔いなく生命を燃焼させることだ、と自身の信条を話した。

政府の発表によれば、来年は90歳以上の老人が200万人に達し、そのうち働いている人が67万人いるという。俺もその一人だと思うと、誇らしい気もするが、スッと首筋を孤独感の風が吹き過ぎるのも感ずる。秋の訪れだろうか。

テレビの旅番組が好きで、ここのところ引っ越しでおろそかになっていたのを、ようやく身にしみて見た。好きな個性派俳優が京都の円山公園を訪ねた話だ。ばんばひろふみさんが案内に立った。バンド「バンバン」のばんばさんは「『いちご白書』をもう一度」の歌で、文字どおり一世を風靡した歌手だ。私にとっても懐かしい。

歌詞でも最初に告げるように、歌の土台は『いちご白書』というアメリカ映画だ。黒人が利用している土地への施設建設をめぐる問題に端を発した学園闘争。州の支配層(知事をはじめとする保守層)と対立する学生たちは大学の体育館にこもる。切り崩しのために州兵まで動員される。学生たちは座り込んだ床をバンバンバンとたたくことによって連帯の意志を表明する。この繰り返しは胸に響く。

私がこの映画を見たのは初老の頃だが、今でも思い出しては机をバンバンバンとたたいている。最後のシーンは、力尽きた学生の一人が、包囲した州兵の群れの上に身を投げかけるところで終わる。

あの投身は、裏磐梯・五色沼の紅葉や、黄金のしとねを広げる青森・秋田のブナの黄葉林に、声を上げて投身したい思いをかき立てる。そういう悲壮な美しさがあった。

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