国内の自動車メーカーで初めて「定年引き上げ制度」を導入したのがホンダだ。

ホンダは1992年の時点で再雇用制度を導入するなど、シニア活用の歴史が長い。60歳で定年退職し、1年ごとに契約を更新する形で再雇用を行ってきた。ただ、社員は定年の時点で気持ちに一区切りついてしまううえ、給与も現役時代の5割に減少してしまうため、「モチベーションの下がることがあった」(人事・コーポレートガバナンス本部長の尾高和浩執行役員)。

そこで2017年度から導入された定年引き上げでは、賃金は現役時代の8割の水準が維持される。業務は現役時代のものを継続できるだけでなく、従来は選択肢になかった海外派遣や関係会社への出向など、働き方の幅が広がった。経験豊富なシニア層には、技術を伝承していく役割も期待されている。

定年引き上げと同時に導入したのが選択定年制度だ。60~65歳のどのタイミングで退職しても、会社は定年として扱う。一律に65歳を定年とするのではなく、個々人が定年のタイミングを選択できるようにした。「日本人の働き方として、最後まで勤め上げたいという美徳がある」(尾高執行役員)ためだ。

年金の支給年齢が段階的に65歳へ引き上げられることもあり、シニア層の労働意欲は旺盛だ。ホンダが実施した調査では、60歳を超えても正社員として活躍したいという意欲を持っている人が8割という結果になった。

「多様化する働き方のニーズに合わせるのが企業の責務」と語る尾高和浩執行役員(撮影:尾形文繁)

世代交代を阻害してはいけない