「あんなキツいことは、あの時期しかできませんよ」

八重山諸島にある穴場的な素泊まり宿のリビングで、たまたま居合わせた長身の男とビールを飲みながらしゃべっていた。その男を一目見たときから、若い頃はそうとう本気でスポーツをしていたのだろうと思っていた。人並み外れて体格がよかったからではなく、しぐさや目つき、周りへの気配りの様子からそう感じたのだ。

世の中には「中学から大学までずっとスポーツをやっていたので、私は体育会系の人間でして……」と自分から言い出す人もいる。そういう人には何も感じたことはない。懸命にやっていた度合いの深い人は、自己の存在をことさら示そうとはしないからだ。

自制しないと潰れる

島の宿にいたその男は、子供の頃から野球漬けで、甲子園、プロ野球を目指していたという。それにふさわしい成績を収めており、自分だけでなく、両親や友人、教師らも彼の可能性を信じ、応援していたそうだ。高校は野球の名門校に進み、レギュラー選手になった。しかし、自身の代の年だけ甲子園に出場できなかった。プロへの道が閉ざされ、彼はすっぱり野球から離れた。

「キツいことに耐えて、耐えれば耐えるほどうまくなり、勝てる。逆に、逃げればすぐ誰かに追い越され、負ける。この単純な原則だけを信じて、毎日毎日、われながらよくやっていたと思います」

彼の言いたいことは痛いほどよくわかった。私も15歳から本気で運動を始め、日本体育大学から海上自衛隊に入り、特殊部隊を創設。さらなる高みを目指して、徹底的に心身を酷使していた。確かにキツいことに耐える毎日だった。そして、私は現在も52歳にして特殊戦の世界で生きている。そのキツさは若い頃のものとは別物だ。