【今週の眼】柳川範之 東京大学大学院教授
やながわ・のりゆき●1963年生まれ。慶応義塾大学通信教育課程卒業。93年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。東京大学助教授などを経て2011年から現職。主著に『法と企業行動の経済分析』『独学という道もある』など。(撮影:今井康一)

少し前まで社会人の学び直しの文脈で議論されてきた「リカレント教育」という言葉が、再び注目を浴びてきている。政権が「人づくり革命」を掲げるなど、世の中では、社会人が新たな技能や知識を習得することに対する関心が高まっている。

その根本的な理由は、寿命が延びているのに対して、技術革新や環境変化のスピードが速く、このままでは取り残されると考える社会人が増えてきたことだろう。

通常、そのような能力開発・技能習得の障害として指摘されるのは、忙しい社会人には、それに費やす時間や資金がないという問題だ。政策的には財源の問題ということになる。当然、この点が大きな課題であることは事実で、政策的支援が一層必要となる分野だろう。

しかし、リカレント教育の本質的な課題は、何をどう勉強すれば能力がより高まり、より活躍できるようになるのか、もっと即物的にいえば、どうすれば企業が中途採用をしたくなり、給料や待遇が改善されるようになるのかが、かなり不透明だという点にある。

どんな教育プログラムを受ければ次のステップにつながるのか、その将来性が明らかでないと、多くの人は教育の成果を具体的に予測することができず、時間と労力をかけることを躊躇してしまう。