エズの頂上にある植物園から見下ろしたシャトーエザ。傾斜は優に30度以上ある

絶景を売りにするレストランは、料理に難のあることが多い。いや、正直に書こう。大抵の場合はろくでもない。

懐が寂しいにもかかわらず世界各地の飲食店で散財し、絶景と名のつくところもいろいろと見てきた。だが、この二つを同時に堪能しようとするたび、痛い目に遭ってきた。

その結果、景色は景色で堪能したうえで、河岸を変えて食事を……となるわけだが、セオリーがあれば、そこに例外が存在することもまた、旅の経験の中で獲得した教訓だ。

絶景と美食という両条件を奇跡的に満たす店を訪れたのは2008年の8月のことだ。南仏のコートダジュール、ニースとモナコの中間に位置する、標高400メートルのエズ村にその店はあった。

中世のコートダジュールは、たびたびサラセン人の侵略にさらされてきた。そのため、防衛を旨として断崖絶壁上に建設された村が100以上も点在する。鷲の巣が卵を守るため断崖上に作られるのを彷彿とさせることから鷲の巣村と名付けられている。

最も美しい鷲の巣村ともいわれるエズは一回りしても30分ほど。石畳と石造りの家が迷路のように入り組んでいて、9世紀に村が作られた当時の面影を残す。大軍に襲撃されても一度に制圧されないようになっているらしい。