民進党の新代表には、総選挙に向けた政策ビジョンの早期提示が求められる(時事)

枝野幸男、前原誠司両氏による一騎打ちという形で民進党の代表選挙が行われている。この文章が活字になる頃には結果が明らかになっているので、どちらが新代表になるにせよ取り組むべき課題は何なのかを考えておきたい。

一騎打ちなので新聞、テレビは両候補の対立点ばかりをクローズアップした。しかし、今の民進党にとって政策面でも政治路線の面でも、選択の幅は大きくない。前原氏は持論の憲法9条見直しを封印して、安倍晋三首相のペースによる改憲論議に乗らないことを明らかにした。首相の9条改憲論は野党と憲法擁護陣営を分断するための政治的な仕掛けであり、野党がこれに距離を置くのは当然の政治判断である。

対立点らしきものは、野党協力への対応と消費税率引き上げのタイミングであった。前原氏は財政学者、井手英策氏の提言を採用し、消費税率引き上げと社会保障拡充の同時追求を主張している。枝野氏は中福祉中負担という社会像は共有するものの、消費税引き上げのタイミングは柔軟に判断すると主張した。前原氏は純粋な政策論を展開しているが、次の総選挙で安倍首相が2019年10月の消費税率引き上げの延期を再度打ち出して勝負を仕掛けたときに、予定どおりの増税を主張して戦いになるのか。この点については将来の方向性を確認しておくことで十分であり、具体的な実施のタイミングは自民党の出方を見て決めるしかない。

野党協力は依然として必要

共産党を含む野党協力について、前原氏は見直しを主張している。同時に、地域レベルで協力の態勢が整っている所では野党協力で選挙を戦うことも否定しないと発言している。連立政権を視野に入れた政策協定に基づくフルスペックの野党協力は、今の民進党には不可能であろう。しかし、安倍政治の暴走を止めるためには自民党の議席を大幅に減らすことが不可欠であり、そのためには小選挙区における候補者の一本化が必要である。前原氏は既存の野党による協力よりも、野党再編を志向しているといわれている。だが自民党が巨大な議席を持つ一強状態の下で小さい野党が併合してもインパクトはない。本格的な再編を起こすためにも、野党協力で自民党の議席を大きく減らすことが必要である。

また、前原氏は近年、小沢一郎氏と極めて密接な関係にある。総選挙の実施時期が見えてくると、小沢氏の持論である4野党共闘による総選挙での与野党逆転に向けて前原氏も現実的に対応する可能性は大きいと思われる。

新代表の下で民進党への期待が大きくなるとは思えない。ただ、民主党、民進党で党運営を担ってきた二人の指導的政治家が代表選挙を戦い、自民党に対抗するための基本的な政策の柱を確立できたことには意味がある。国民負担率の引き上げを前提とした福祉国家の再構築、安倍流の改憲論議の土俵には乗らないことを基盤に、民進党は総選挙に向けた政策ビジョンを打ち出すべきである。

「日本ファースト」に疑問