1兆円の資産売却を発表した万達集団の記者会見。背景に中国当局の海外投資規制が見え隠れする(ロイター/アフロ)

7月20日、北京市内の高級ホテルで、大連を本拠地とする不動産大手・万達集団の資産売却が発表された。

取引総額637億元(1元は約16円)のうち、438億元で旅行関連13社を不動産大手・融創中国(本社は天津)に、199億元でホテル77軒を同中堅・富力地産(本社は広州)に売却した。発表会場の混乱ぶりは、この取引の背後に隠れる謎を感じさせた。

万達集団創業者の王健林董事長(会長)は、事業を売り急ぐ理由を「アセットライト(負債軽減)」戦略の前倒しだと説明している。ただ、不動産業界の中で、万達集団の負債比率が突出しているわけではない。実は、万達集団が同業他社と違うのは、大量に海外資産を抱えており、海外投資の代表企業といわれてきたことだ。

その1カ月後の8月18日、中国国務院は「海外投資方向のさらなる誘導と規範化に関する指導意見」を発表。海外投資を「奨励」「規制」「禁止」の三つに分け、さらに規制項目として「不動産・ホテル・映画館・娯楽施設・スポーツクラブ」を明確に指定した。これらすべての項目を持つ万達集団は名指しこそされなかったものの、市場関係者の多くは「この規制は万達を狙ったものだ」と見た。

中国政府が海外投資規制を強化した背景にあるのは、言うまでもなく外貨準備高の急減だ。2014年6月に4兆ドル近くでピークをつけた外貨準備高は、この2年半の間に約1兆ドル減り、17年1月についに心理的なラインである3兆ドルを割った。これに慌てた金融当局は、まず規制の対象を不動産や金融などの「虚業」の業種に絞って、万達集団や上海・復星集団など代表的な企業を狙い撃ちにした。

こうした規制は、「実業」の業種・企業にも及んだ。