【今週の眼】佐藤主光 一橋大学教授
さとう・もとひろ●1992年一橋大学経済学部卒業、98年加クィーンズ大学博士号(経済学)取得。2009年から現職。専門は財政学。政府税制調査会委員なども務める。著書に『地方税改革の経済学』『地方財政論入門』、共著に『震災復興 地震災害に強い社会・経済の構築』など。(撮影:梅谷秀司)

将来の借金返済などに備え、地方自治体は財政調整基金などを積み立ててきた。それら基金の残高が20.8兆円(2014年度実績)に達したことが話題になっている。

自治体の大半は地方交付税など、国からの財政移転に依存している。国の基礎的財政収支の赤字(16年度約18.7兆円)が続く中、地方で基金を貯め込んでいる状況は、かつて国の一般会計が厳しい中、特別会計は多くの余剰金を抱えていた(「母屋でおかゆをすすっているのに、離れではすき焼きを食べている」)ことを想起させるかもしれない。むろん、地方自治体にも言い分はある。基金残高の少なからぬ金額は地方債償還のほか、将来の公共施設など社会インフラの更新費用に充てられる。実際、自治体は老朽化したインフラを多く抱えており、その更新計画を作成してきている。

ただし、自治体別に見ると、これですべてが説明できるわけではなさそうだ。財政力があって地方交付税を受け取らない都市圏の不交付団体の基金増は、計画的というよりも、景気が上向いて企業からの税収(法人事業税・住民税)が増えた結果でもある。

企業税収は地域間の(人口1人当たりで見た)税収格差を広げる要因であり、好況・不況に左右されやすいことから地方の税収を不安定にしている。実際、リーマンショックの際、東京都は1年間で約1兆円の税収減となった。都市圏の自治体からすれば、景気後退に備えて基金を積むのは当然の備えといえる。他方、住民に身近な公共サービスを提供する自治体の税源が不安定なこと自体が問題視されてもいいだろう。本来、自治体の税源は企業課税ではなく、地方消費税のように税収が安定的な税に拠ることが望ましい。