私は現在、静岡県にある一般社団法人「ひかり」に出入りしている。知的・発達障害の子供に療育を行っている通所施設でお手伝いをするためだ。

特殊部隊出身者がどうして療育にかかわるのか。一見すると何の関係もなさそうだが、実はそうでもない。

ゼロベースで見直す

海上自衛隊で特殊部隊員になるには、2年間の専門教育を受ける必要がある。

前半の1年間の基礎訓練が終了すると、候補生らは私の管理下に置かれる。当時はそこでまず、筋肉および体脂肪の増減に関するメカニズムやトレーニング理論、栄養学に関する講義を行った。

特殊部隊を目指すような者は大抵、小さな頃から本格的にスポーツをやっている。彼らの身体能力は非常に高く、トレーニング方法や栄養学に関する知識もそれなりに備えている。

だが最初は、専門教育として座学をしっかりと行った。彼らにより正しく最新の知識を持たせ、その重要性についての認識を新たにしてほしかったからだ。

身体の動かし方も同様である。厳密に正しく立つことから始めて、その延長線上にある、正しく歩いたり走ったりするためには何ができていなければならないのかについて、論理的に話す。彼らがそれを正しく理解したら、反復させることにより、厳密に正確に立つ技術を身に付けさせる。

人は誰でも、知識や自分の身体の動きに関して、思い込みや自己流による癖のようなものが少なからずあるものだ。特殊部隊員に選ばれるような身体能力があったとしても、積み木に例えれば、きれいに積まれていない部分が大抵ある。それがあるとさらに新たな積み木(知識や能力)を積んでいくときの障害になる。だから、すべてをゼロベースにして、正しくきれいに基礎を固めてもらおうとした。