トランプ政権の屋台骨であったスティーブン・バノン氏が退任し、混迷が深まる米国(ZUMA Press/アフロ)

米ホワイトハウスは8月18日、ドナルド・トランプ大統領の最側近とされたスティーブン・バノン首席戦略官兼大統領上級顧問の退任を発表した。

事実上の解任である。その兆しは、実は7月末からあった。

日本のメディアは伝えなかったが、8月4日夜にホワイトハウスでトランプ大統領主催の夕食会が開かれた。招かれたのは、保守系最大のニューステレビ局FOXニュースなど米、英、豪各国のメディア多数を支配する「世界のメディア王」として知られるルパート・マードック氏である。

会食に同席したのは、ジョン・ケリー大統領首席補佐官(退役海兵隊大将)と大統領の娘婿のジャレッド・クシュナー上級顧問であった。その席でケリー補佐官は、バノン氏がホワイトハウスの主要スタッフと協調せず、秩序・規律を乱していると強く批判した。

ところが、トランプ大統領はバノン氏を擁護しなかったうえに同氏への信頼が低下したことを認め、さらにマードック氏が同夜の会話を締めくくるかのようにバノン氏解任をトランプ大統領に迫ったというのだ。

その夕食会前後に起こったことも無視できない。ケリー氏が大統領首席補佐官に就任したのは7月31日。その直前からホワイトハウス入りして実務に就いていた同氏は電光石火で国家安全保障会議(NSC)の上級部長3人を解任した。7月27日付で解任されたのはデレク・ハーヴェイ中東担当上級部長、8月2日付ではエズラ・コーエン・ワトニック情報担当上級部長とリッチ・ヒギンズ戦略企画担当上級部長である。この3人の上級部長はバノン首席戦略官時代の直系であり、バノン氏が「天敵」扱いしてきたハーバート・マクマスター国家安全保障担当大統領補佐官(現役陸軍中将)の指示に従わず、秩序を乱す象徴とされた。

このように「バノン氏包囲網」ができつつあったのだ。