ある日、顧問先のA社の社長が深刻な面持ちで私の元に相談に来た。

A社は機械類の組み立て販売を専門とする中小企業で、先代社長が創業して約50年の歴史を誇っている堅実な企業である。現社長は2代目で、40歳代の働き盛りだ。

景気停滞が続くとはいえ、2代目社長はしぶとい経営で何とか業績を維持してきた。

「実は、この件でして……」と言いながら社長がかばんから何かを取り出した。それは「納品書」と書かれた書面であった。内容を見ると、A社がB社に機器15個を代金600万円で約3年前に納品したというものだ(消費税別)。

嫌な予感を覚えながら、「もしかして、B社が代金を支払わないのですか?」と私が尋ねると、A社社長は語気を強めて、こう話し始めた。

「そうなのです! 弊社の納入した製品のうち2個に不具合が見つかったのでほかの製品も信用できない、だから代金は支払わない、ということなのです」

早急に不具合のあった製品を引き取り、新品を納入すると申し出たという。しかし、「B社の社長は、御社の製品はもはや信用できないので新品を納品されても困る、と言い張るばかりなのです。弊社は、父の代から堅実で丁寧な仕事を続けてきた自信があります。2個に不具合があったというのも信じられません」。