【今週の眼】太田聰一 慶応義塾大学経済学部教授
おおた・そういち●1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

大手エアバッグメーカーのタカタが7月27日付で上場廃止となった。製品の欠陥がグローバル企業にもたらすリスクを如実に示した事例として記憶に残るものだったが、それに劣らず上場廃止決定後のタカタ株の動きは人々を驚かせた。

経営破綻した企業の株は、もはや株主に収益をもたらすことがなくなるので、急激な価格低下に見舞われる。タカタ株もその例に漏れず、6月26日の民事再生法の適用申請を受けて売り注文が殺到し、7月7日には上場来安値の15円をつけた。

しかし、その後の動きは異様ともいえるものであった。無価値になることが確定している株をめぐってマネーゲームが行われ、14日には153円まで株価は高騰、いわゆる「テンバガー(10倍株)」となった。その後もタカタ株は乱高下し、取引最終日となる26日の終値は18円だった。

タカタ株の動きは、われわれにバブルの正体を示してくれる。ある企業の株を保有すれば、その企業に対する資金提供者として利潤分配(配当)にあずかる権利を得る。したがって、企業収益の見通しがよくなると、配当の引き上げ期待が高まって株価は上昇する。その意味で、企業利潤こそが株価を決定づける。

しかし、株価はバブルにも左右される。株式は転売することができるために、価格形成には将来の株価の期待が重要な役割を果たす。たとえば、根拠はなくとも多くの人々が「株価は将来上がる」と信じれば、現在の株価が上昇してしまうというバブルの動きがもたらされる。価格上昇のうちどれだけがバブルによるものなのか、判定は難しいが、タカタ株のケースは、上場廃止によってファンダメンタルズが消失したために、バブルの動きが見事に浮き彫りになった。