銀行勤務の山本達也さん(仮名、33)は、昨秋に顧客情報のビッグデータを扱う部署に配属された。しかしエンジニアとの意思疎通がうまくいかず、データの性質を理解するにも時間がかかる。思い悩んだ末にプログラミング教室の「テックキャンプ」に通うことにした。

家族には「7月はいないと思ってくれ」と断り、会社帰りにほぼ毎日通った。1カ月で100時間弱の勉強をした結果、「過去にかかわったアプリの開発工程を、今になって理解できるようになった」(山本さん)。今後は独自のWebサービスを制作することによってスキルを一段と磨く予定で、「もっと具体的な業務改善を、顧客に提案できるようになりたい」と意欲を語る。

2014年11月に開始したテックキャンプには、8000人以上の卒業生がいる。受講生は大半が経験ゼロの初心者だったが、1カ月で50~100時間を勉強すれば、「サービスを開発する手前の教養レベルのプログラミングスキルは身に付く」(運営会社divの真子就有(まこゆきなり)代表)。これまではIT企業の会社員が短期集中で受講することが多かったが、今年に入り金融や不動産など幅広い業種の社会人が、2~3カ月かけて週末に学ぶケースも増えてきているという。受講生には30代以上も3割いる。

オンラインでプログラミング教室を展開するコードキャンプは、企業研修も多く手掛ける。「リーダーシップ研修を中心に投資をしてきた企業が、新規事業を立ち上げられる人材を育成するために、プログラミング研修を取り入れ始めている」(米田昌悟取締役)。

新入社員全員にサービスを作らせる

実際に、たとえばリクルートホールディングスは、11年から新卒社員100人を対象にプログラミング研修を実施している。16年からは入社前の内定者に、3カ月かけてWebサービスを作ってもらうようにした。入社後はエンジニア職にとどまらず、マーケティングや人事、広報など幅広い分野に配属する。「ITを活用することでルーチン作業を効率化し、社員が人間でなければできない業務により多くの時間を割けるよう、働き方を見直している」(IT人材開発室の林輝葉氏)。すでに11年入社の中には、マネジャー職に就いてITスキルを駆使しながら活躍する社員も出てきている。

今やプログラミングは、エンジニアに限られたスキルではなくなった。あらゆる産業がITと密接につながる中、いわゆる文系職のビジネスパーソンにも必須のスキルとなりつつある。