ネットの本質は「the」に表される

インターネットは、英語だとthe Internetと定冠詞が付く。つまり世界で唯一の存在ということだ。人々が国境で分断されず、唯一のサイバー空間でつながる。この概念が普及の初期において、多くの人をネットに引き寄せた。ところが日本語にはtheのような言葉がないから、日本人がネットという概念を真に理解するのはやや難しかった。

このことに私が気づいたのは、米国同時多発テロの直後だ。米国は世界の航空網から国内の空港を遮断したのだが、同じ頃に米政府の高官から「サイバーテロに備えて米国をネットから切り離したら、ほかの国は困るか」と聞かれた。「いちばん困るのは米国自身だ」と答えたが、サイバー空間の先導役だった米国がネットの分断を検討したという事実に、ショックを感じた。グローバル空間がナショナリズムによって脅かされた、初めての瞬間だったと思う。