今年の秋、北京で開催予定の中国共産党第19回党大会を前に、要人の動きが活發になっている。7月15日には、重慶市共産党委員会書記・孫政才の解任が決まった。直轄市重慶のトップであり、後任は陳敏爾氏、習近平国家主席の腹心だという。

5年前を思い出したのは、筆者ばかりではあるまい。時も同じ党大会直前、所も同じ重慶、前重慶市党委書記・薄熙来らの失脚である。現政権発足に先だって起こったこの一大スキャンダルは、次世代リーダー候補の挫折としても、その後の政権・政策を方向づけたものとしても、なお記憶に新しい。

薄熙来事件を彷彿

しかしその薄熙来事件とは、真相のよく見えないものである。側近の元重慶市公安局長・王立軍の米国領事館亡命未遂に端に発し、妻の谷開来による英国人実業家殺害、薄一家の不正蓄財、拷問など、経緯と罪状は大々的に、次々と明るみに出た。しかしなぜ、薄熙来自身および左右はそんなことをしたのか、しなければならなかったのか。外から窺い知れたのは、かれらの行状、あるいは存在が、政権にとってどうやら不都合だったという事実ばかりである。

このたび解任された孫政才は、次の政権を担う次世代リーダーの一人として注目を浴びてきた人物である。重慶で薄熙来の後任に就いて、かれらの遺した政治風土の一掃を期待された。そうした人物の解任である。つまりリーダー不適格の烙印を押されたわけで、薄熙来のような犯罪ではないにしても、失脚という点ではかわらない。実際、解任理由は「習総書記の精神と差があり、『薄・王思想』の毒の除去が徹底できていない」だといわれている。薄熙来の再現というにひとしい。

くりかえしといえば、いまや習近平の代名詞にもなった「反腐敗」もある。政権発足以来のキャンペーンで、同じ7月の中旬にもまた、報道があった。中国国有企業の大手20社の監査が公表され、9割にあたる18社で、不正な売上高の水増しが発覚したという。

国有企業改革の推進も、やはり政権のスローガンのひとつであった。だから今回の監査は、そうした改革姿勢の喧伝ではある。それと同時に、実際には不正が蔓延していて、ほんとうの改革が進んでいないことを端なくも露呈するものでもあった。