昔、筆者が大学生だった頃、経済学にマルクス経済学と近代経済学があった。因果関係を重視するのか、相関関係に重きを置くのかが両者の大きな相違だと聞かされたことがある。近代経済学(近経)は、ケインズに代表されるもので、事象間のことは、どうしてこうなるかはわからない。でも強い相関関係にあるということはいえるというのが、近経の特徴だった。

先日、NHKスペシャルの「AIに聞いてみた どうすんのよ!?ニッポン」を見ていて当時のことを思い出した。番組では、五つの提言をしている。

(1)健康になりたければ病院を減らせ

(2)少子化を食い止めるには結婚するより車を買え

(3)ラブホテルが多いと女性が活躍する

(4)男の人生のカギは女子中学生の“ぽっちゃり度”

(5)40代ひとり暮らしが日本を滅ぼす

これは、AI(人工知能)のレベルが、50年前の近経のレベルだという意味だろうか。常識で見ても、この5項目には、因果関係があるとは思えない。近経は、50年に及ぶ歴史の積み重ねで、因果関係を解きほぐしてきた。AIもそうなるのだろうか。マルクス経済学は、因果関係を説明するのに、資本、労働、土地の3大要素から解きほぐした。変数は三つである。近経は、数こそ増えるが変数は経済指標なので限りがある。囲碁や将棋では、AIが人間に勝つこともできるようになってきた。だがこれもせいぜい限られたマス目の世界の動きだからである。