仕事場の移転に一区切りついたので、久しぶりに書店をのぞいた。幼児がおもちゃ屋へ入ったときのように、胸がキュンとする。ところが店頭に平積みされた新刊の文庫本の題名と帯を見て、胸キュンが胸ドキンに変わった。

題名は『フロスト始末』、帯は上巻が「超人気警察小説完結」、下巻が「さらば、フロスト警部」。ちょっと待ってくれよ、勝手にトントコ事を進めるな、と抗議の声を上げながら、とにかく上下巻を買って、実態解明に乗り出した。

結論から言えば、フロスト警部が始末されるのは作者R・D・ウィングフィールドさんが死んじゃったためであった(2007年、享年79歳。私より10歳若い)。しかしこの作品は完成していた。いわば遺作。

私の生涯のテーマは“組織と人間”。だから他人の書いたものでもこの視座から鑑賞する。特に警察モノは格好のテキストだ。フロストは警部だけど、所属警察署長の持て余し者だ。服装がだらしない。言行は無礼至極、飛ばすジョークは下ネタが多く、笑えないものが少なくない。ヘビースモーカーで、所構わず灰をまき散らす。

今回はフロストの上司として主任警部が赴任し、フロストの非行を暴いて追い出す(転勤させる)策を次々と打ち出す。フロストが身動きできないようにパワハラを濫発する。しかしフロストはめげない。フロスト流の“現場力”によって、ヨタヨタしながらも最後には勝利する。