静岡市清水区の前田キミエさん(82)は、10年近く貸していた区内の一戸建てから借り主が退居するという知らせを受けて途方に暮れた。内装は傷みがひどく、リフォームに200万円はかかる。改修しても、新しい借り手が見つかるかどうかわからない。一般的に、売却するとなれば、資産価値がなくなった建物は解体し、更地にすることになる。この家は大工だった今は亡き夫が、娘のためにと37年前に建てた家(下写真)。意匠を凝らした天井や柱の一本一本に思い出があり、家族にとっては故人をしのぶ大切な家で、壊してしまうのは気が引けた。

悩みを解決したのが、住宅建築・販売を行うヤマダタッケン(石川県金沢市)が2014年に立ち上げた「70年代不動産」事業だ。中古物件を探しリノベーションを行って再販するものだが、中古物件の中でも目をつけたのが、1970~80年代の住宅。この年代の戸建て木造住宅の現在の価値はゼロ。木造住宅における税法上の耐用年数が22年と定められているからだ。70~80年代の中古物件なら、土地価格から解体にかかる費用数百万円を差し引いて購入できる。

資産価値ゼロとはいえ、状態のいい物件であれば、大枠の構造はそのまま残しての改修が可能だ。従来のように壁や床をめくって新しくすることなく改修すれば費用が抑えられる。「周辺の新築注文住宅の相場より1000万円ほど安い価格で販売できる物件かどうか」(ヤマダタッケンの澤野恵社長)を基準に物件を見極める。

新築着工数が年々減る中、空き家リフォームビジネスに光明を見いだす工務店や不動産会社は多い。現在は北海道、岐阜、愛知など全国32社が「70年代不動産」加盟店に名を連ねる。冒頭の物件を手掛けた工務店、静岡三基(静岡市)もその一つだ。