湾岸の高層マンションは東京五輪も追い風に、価格がうなぎ上りだ(撮影:尾形文繁)

「7000万円台なんて手が届かない。五輪が終わるまで待つしかないのか」──。

都内の一流企業に勤める30代の男性は、マンションの購入に踏み切れずにいる。妻は専業主婦、もうすぐ小学校へ進学する息子の成長に合わせて、都心のマンションの購入を検討していたが、希望するエリアのマンション価格は、想定していた金額をはるかに上回っている。価格が下がるまで現在の賃貸マンション(家賃は月15万円)に住み続けるのがよいのかどうか、悩みは尽きない。

首都圏の新築マンションの価格高騰が止まらない。不動産経済研究所の調べでは、2017年上期(1~6月)に発売されたマンションの平均価格は5884万円(前年同期比3.5%増)。東京23区の平均は7159万円(同5.6%増)に達した。

業界では昨年から「もう天井だ」との声が出たが、今年に入っても価格は上がり続けている。東京カンテイの髙橋雅之主任研究員は、「この先数年は平均価格が弱含みする気配はない」と分析する。

マンション価格が高騰した最たる要因は、建築費の上昇だ。東日本大震災の復興需要に加え、東京五輪の開催決定、都心の再開発も重なり、建設現場の人手不足は深刻化。公共工事の見積もりで使う設計労務単価は震災後の5年間で39.3%上昇し、影響は民間工事にも波及している。

さらに地価の上昇も追い打ちをかけた。今年7月に発表された最新の路線価は、東京の最高価格がついにバブル期のピークを突破、都心各地の価格も軒並み上昇している。再開発やホテルの建設がラッシュを迎え、マンションに適した好立地の用地はめったに出てこなくなった。

高値を更新し続ける販売価格とは裏腹に、首都圏のマンション販売には変調が表れていた。売れ行きが昨年から失速し、契約率が好不調の目安である70%を下回る月が続出している。

売れ行きが悪化すれば、需給のバランスを取ろうと、価格は下がっていくのが市場の原理。が、現状は平均販売価格だけが奇妙なまでに高止まりし続けている。

不動産経済研究所の松田忠司主任研究員は、「昨年11~12月ごろから価格が下がっているエリアもあり、まだら模様になっている」と指摘する。エリアによってはすでに値下げが起きているものの、新規発売の物件は、ニーズのある都心や駅前など、価格の高いエリアの比率が高まっているため、平均価格が高止まりしているのだ。

「野村ショック」が告げる相場下落