【今週の眼】小峰隆夫 大正大学地域創生学部教授
こみね・たかお●1947年生まれ。東京大学卒。経済企画庁経済研究所長、物価局長、調査局長、国土交通省国土計画局長などを経て、2017年4月から現職。日本経済研究センター理事・研究顧問も務める。著書に『人口負荷社会』『日本経済論の罪と罰』『政権交代の経済学』など。(撮影:尾形文繁)

内閣改造があり、人心が一新したところで、アベノミクスについても全面的に見直しを行い、「アベノミクス」という言葉そのものも使わないようにしてはどうか。次のような点で、アベノミクスという呼称を使う必然性がなくなったからである。

第一に、実験的な政策が行き詰まっている。アベノミクスという呼称には、「安倍内閣ならではの思い切った経済政策」という意味が込められている。確かに、安倍政権は、過去に例のない経済政策を次々に展開してきた。その代表は金融政策であり、日本銀行は黒田東彦総裁の下で大胆な量的・質的金融緩和を断行し、さらにはマイナス金利、イールドカーブ・コントロールへと進んでいった。いずれも事前にその効果を十分見極めることが難しい(やってみないとわからない)という意味で実験的な経済政策であった。

しかし、こうした実験的な政策は所期の目的を達成できていない。逆に、日本銀行の国債・株式保有の巨大化、金利機能の喪失など副作用のほうが明瞭になりつつある。

第二に、非常時型の対応が経済に適合しなくなってきている。そもそも実験的な政策が求められたのは、経済が前例のない困難に直面し、従来型の政策では対応が困難だという認識があったからだ。その意味でアベノミクスは短期的な非常時用の政策だったといえる。

しかし、いまや日本経済はバブル期をも上回る長期の景気拡大が続いており、ほぼ完全雇用が実現し、物価も継続的なマイナス状態ではなくなった。どう見ても非常時ではない。いま求められているのは、長期的な観点から生産性を高め、供給力を引き上げていくという正統的な経済政策である。

第三に、アベノミクスに含まれていない分野こそが大きな課題になりつつある。その典型は財政の再建と社会保障改革だ。