ジャズミュージシャン 大江千里(56)
おおえ・せんり●1983年、関西学院大学在学中にデビュー。2008年に米国留学、12年の卒業と同時にジャズ・レーベル・PNDレコーズ設立。シーラ・ジョーダンらをボーカルに迎えた『アンサージュライ』(16年)までアルバム4枚を発表。著書に『9番目の音を探して 47歳からのニューヨークジャズ留学』。(撮影:山田真実)

40代後半でも学び直しはできる

2008年、47歳のときにポップミュージシャンとしてのキャリアに区切りをつけ、米ニューヨークのジャズの名門・ニュースクール大学に留学しました。4年半かけ卒業した後は、ニューヨークを拠点にジャズピアニストとして活動しています。自身のレーベルも立ち上げ、アルバムを4枚リリースしました。

ポップスをやってきたけれど、ジャズは10代から好きだった。ジャズテイストの楽曲も作った。だから米国でもいけるんじゃない?と期待していました。しかし入学してすぐ、強烈なアウェー感に直面。リズムにせよ響きにせよ、僕の音楽はとうていジャズではなかったのです。文字どおりジャズとともに育ったアフリカン・アメリカンのようなすごい同級生がゴロゴロいる。彼らの域に達するのは100%不可能だと、早々に悟りました。入学してから3年は「ジャズで食べていくのは無理なのか」と悩み続けました。

でもそれ以上に僕をとらえたのは、「ジャズってどうなっているんだろう。どう弾けばあんな音になるんだろう」という謎。それを解き明かしたかったから、帰国は考えなかった。すぐにはジャズで食べていけない以上、手持ちのおカネを有効に使って学ぶしかない。次第に「何に使う・使わない」という価値軸が生まれ、投資と節約をストイックに使い分けられるようになった。いくつになっても変わることができるのですね。

「ちょっといい感じ」 それでいいのか