某全国経済紙を読んで、目が点になった。政治部次長の記名がある、その記事のタイトルは「対北朝鮮 レッドラインを捨てたのか トランプ氏の危機」。曰(いわ)く、北はICBM(大陸間弾道ミサイル)発射でレッドラインを踏み越えたのに、米国は軍事行動に出ない。国務長官は強く抗議したが、「勇ましい言葉」は「軽く、うつろに響く」。「実態が伴わない『圧力』という言葉を連呼するだけでは『圧力』の価値は下がる」「『圧力』強化を唱えても『無力』を浮き立たせるだけだ」。

つまり米国に「実態」=武力行使を催促している(と読める)。同じ記者は4月に「対北朝鮮 失われた23年」という記事で「日米の元政府高官が『あのとき、北朝鮮を空爆していれば……』と悔や」んでいる、と書いている。23年前、米国は空爆の代わりに、核開発凍結を求める米朝枠組み合意を選択した。なるほど、北は合意を紙くずのように投げ捨てたのだが、しかし、あのとき、空爆を強行していたら、どうなったか。

待ってましたとばかり、それを口実に、北は38度線から50キロのソウルに砲弾の雨を降らせただろう。「自分ファースト」の独裁者は、何万、何十万の命が失われようと一顧だにしない。戦争を起こし、休戦協定という形で米国を交渉のテーブルに着かせ、体制の存続を保証させることが、独裁者の狙いなのだ。

米国の武力行使こそ独裁者の思うつぼなのである。