「私には子どもが3人いるから、ライフ・シフトは現実的じゃない」。そう苦笑するのが、都内のIT企業に勤める山本信夫さん(仮名・40代)だ。

『ライフ・シフト』の熱心な読者であり、考え方には共感する。しかし、現実的には教育費がかかる時期で、住宅ローンの負担もある。「転職したり独立したりするリスクは、とても取れない」(山本さん)。本に書かれているような、華麗に転身するマルチステージの生き方は、「今の自分には現実味がない」と言い切る。

前項でも指摘したように、『ライフ・シフト』が薦めるマルチステージのキャリアの実践には、日本においては終身型の雇用システムなどが障害となっている。

だが今回、本に共感したり、影響を受けたりしたという複数の人に取材を重ねると、「会社には言いたくないので名前は伏せるが、ライフ・シフト的な活動をしている」という声が多く聞こえた。

束縛の多い会社員も、ライフ・シフトをあきらめる必要はない(撮影:尾形文繁)

他部署の仕事を手伝い 人脈やスキルを構築