1987年、私は日本体育大学を卒業し、海上自衛隊に最下級兵士として入隊した。

時代はバブル期。学生が会社訪問に来ただけで、自社製品をお土産に持たせる企業が当たり前に存在した。内定を出した後は、学生が他社へ流れてしまわないように高級リゾートで「拘束」したり、何日も高級レストランで接待したりする企業もあった。

そんな時代だったので、「公務員になる」と言っただけで、「えっ、なんで?」と不思議がられた。ましてや自衛隊に自ら望んで入る者などは、幹部はまだしも、最下級兵士に関しては皆無に近かった。自衛隊にとって、新隊員の確保に最も苦労した時代であった。

入隊した理由を同期に聞くと、そんな時代であるにもかかわらず、すべての就職試験に落ちたという場合が少なくなかった。内定が取れず途方に暮れていると、どうやって聞きつけたのか、まったく面識のない自衛官が、突然、入隊申込書を持って家にやってきて、「仕事は楽だ。安定している。(自動車等の)免許が取れる」の3点押しで自分を口説いたという話がとても多かった。

要するに、当時の自衛官の入隊の動機に、国防だとか、日本の独立の維持だとかは関係がなかったのである。就職ができずに困っていたら、向こうから「楽、安定、免許」を売り文句に就職を頼まれたので、つい誘いに乗ってしまった自衛官が大半だったのである。