初公判に出廷する被告の勝俣恒久・東京電力元会長(左写真)、武黒一郎・元副社長(中央)、武藤栄・元副社長(右)(共同通信)

津波は本当に想定外だったのか──。

東京電力・福島第一原子力発電所事故の刑事責任を問う裁判が、東京地方裁判所で6月30日に始まった。

住民による刑事告訴を2度にわたって不起訴処分とした検察庁に代わり、検察審査会での起訴相当との議決を踏まえて、「検察官役」の指定弁護士が勝俣恒久元会長ら3人の東電元首脳を強制起訴。それから1年4カ月を経て初公判が開始された。住民が刑事告訴に踏み切ってから、実に5年以上の月日が経過していた。

防潮堤建設は見送り

刑事裁判での最大の焦点は、なぜ津波対策を実施しなかったのか、だ。

検察官役の指定弁護士は初公判の冒頭陳述で、「防潮堤の設置などあらかじめ対策を講じておけば、事故は未然に防止できた」「津波の襲来を予見したならば、安全対策が完了するまでは原発の運転を停止すべきだった」と指摘。これに対し被告側は、「津波の予見可能性も、事故の結果回避義務も認められない」「必要な対策を先送りしたとの評価は誤り」などと、全面的に争う姿勢を見せた。

200を上回る東電の会議録や社内メール、対策として検討されていた原子炉建屋を囲う防潮堤の図面などを、検察官役の指定弁護士は証拠として提出。それらを基に勝俣氏や原子力部門の最高責任者を務めた被告の武黒一郎、武藤栄元副社長が、原子炉建屋やタービン建屋の敷地を上回る高さの津波が襲来する可能性を予見していたと指摘した。