平常時は一見円滑、自覚症状ないまま進行し、ある日突然牙をむくサイレントキラー。大手の破綻・優良13社を対象に、再生機構等が派遣した専門家や複数企業を知るOBなど87名にインタビューを実施。著者が破綻企業に見いだした共通要因に、あなたの会社は心当たりがないだろうか。

衰退の法則
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──共通項の第一が、経営陣の予定調和的な意思決定だと。

ガチンコの議論をしない。いつも会議はシャンシャンで終わって、そうなるよう事前調整するのがミドルの仕事。経営会議の場で幹部同士がガチンコの議論をするのはよしとしないから、基本的に全会一致。事前に誰かから反対意見が出ようものなら、事務局から「オマエ、調整が足りない」と言われ、上程を先送りするわけですね。

全会一致にこだわるのは、やはりギスギスしないほうがいいという価値観が強いから。上位者が何か言って、みんなで「おっしゃるとおり」と過度に同調する。そして他部門の話には口出ししない。意見すべきときでも言わない。全体最適でなく部分最適になってる。

──PDCA(計画・実行・評価・改善)が回っていないのも共通点。

はい。特にC(評価)とA(改善)は犯人捜しと解釈され忌避される。だから成功・失敗、責任の所在がはっきりしない。これもオフィシャルな場での対立は回避すべきという作法です。大風呂敷広げて始めるけど、その後どうなったかわからない。結果はうやむや、誰も責任を取らない。

──問題が棚上げされたまま、再構築のタイミングを逃してしまう。

全会一致を前提にするかぎり、すっかり角が取れた毒にも薬にもならない折衷案に変容してしまって、本当に必要な角張った解決案は上がらない。で、ズルズルズルと衰弱死に向かうわけですよ。これが衰退の一番の原因なんですね。

全方位丸く収まるお膳立てを根回しできるミドルが“できるヤツ”と評価される。今はやりの“忖度(そんたく)”です。自分の意見は控えて上の考えを忖度し、紙に落として会議を通す調整ができる人間。当然有力者の近くにいるほうが有利なので、政治的影響力を持つ派閥、学閥、本流部門などに属していることが大事な出世条件になる。そして出すぎず、気が利くこと。