作家 西村賢太
にしむら・けんた●1967年生まれ。2007年 『暗渠の宿』で野間文芸新人賞受賞。11年 『苦役列車』で芥川賞受賞。近著に『一私小説書きの日乗 不屈の章』。(撮影:梅谷秀司)

15歳で一人暮らしを始めてみて気づいた。自分は働くことが大嫌いであると。夏は暑いから、冬は寒いから、という理由で働く意欲を失う。部屋に電話はないので、そのまま無断欠勤でクビになる。中卒の身で、働く先も限られているのにその繰り返し。日雇いの仕事で糊口をしのぐような状態が23歳ごろまで続いた。

「家賃は払わない」というのが、基本的な考え方なんでね。支払いはずっと、ためられるかぎりためる。すると、どうなるか。最後は大家から「もう払わないでいいから、出ていってくれ」と追い出されてしまう。つまり、滞納した分は棒引きになるわけだ。

そのやり方が通用しないときは母親に尻ぬぐいさせる。子ども服店の店長をしていた母はけっこう待遇がよかったみたいだった。母からむしり取れるだけむしり取った。そういう10代だった。

東京・神保町のなじみの古本屋で手伝いもしていた。自分では給料の感覚で、ちょくちょくカネを借りていた。全部足すと、1000万円は超えているはず。「ない、ない、その日生きるのが精いっぱいで、かつかつなんだから」と言い続けて、今も返していない。