「日本育英会」という組織はもう存在しないことを、いまだ知らない親世代もいるのではないか。あるいは独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)に改組されたと知っていても、それは育英会の奨学金事業を引き継いだ類似組織にすぎないと思っている人は多いかもしれない。日本学生支援機構労働組合書記長の岡村稔氏が、独立行政法人化以後のその変容を打ち明ける。

延滞すると「ブラックリスト入り」にもされる奨学金は、立派なローンの一種である(イラスト:井内 愛)

小泉純一郎政権の行政改革の一環で日本育英会は廃止され、奨学金事業は2004年からJASSOが担うようになった。以後、奨学金事業の軸は大きく変わった。一言でいえば「教育事業」から「金融事業」にシフトしたのだ。

10年に始まった一連の取り立て強化策は、その顕著な例だった。返還が3カ月滞った人は個人信用情報機関(いわゆるブラックリスト)に登録され、クレジットカードや金融機関の審査に影響が出るようになった。4カ月滞ると債権回収会社に債権が移る。延滞が9カ月になると裁判所に支払督促の申し立てがなされる。

JASSOが法的処理を積極化した結果、現在は年8000件以上の支払督促申し立てが行われている。膨大になった法務をこなすため、組織内にあった小さな法務課は債権管理部に格上げされ、大規模化。差し押さえを意味する強制執行は、10年前は年に1件あるかどうかにすぎなかったが、現在は年約500件も行われている。