昔仕事をした民放から連絡が来た。私が脚本を書いた「新選組始末記」というドラマの一部をTBSのCS放送で7月8日に再放送するということだ。ちょっと驚いた。私はこのドラマの脚本を二度書いた。最初は昭和30年代、2回目は50年代。放送するのは最初のほうだという。驚いた理由は、最初のものはまだビデオがない時代で、一度放送したものは再放送できない、と考えられていたからだ。今の技術は不可能を可能にするほど高まったのか。

いずれにしても懐かしい話で、放送を楽しみにしている。原作は子母澤寛さんだ。新選組はファンが多く、また書き手も食指の動く素材なので、多くの作品が世に出ている。が、私は子母澤さんの作品が原典で、これを超えるものはないと思っている。「宮本武蔵」が吉川英治さんの作品を超えるのは難しいのと同じことだ。

脚本を担当するに当たり、プロデューサーと一緒に神奈川県藤沢市熊倉に住む子母澤さんのお宅を訪ねた。子母澤さんはお茶目な人で、三ちゃんと名付けた猿にまず訪問者の鑑定をさせる。三ちゃんが最後までキキと歯をむき続ける客は、子母澤さんに「きみ、帰ったほうがいいよ」と面談を拒否される。私たちは三ちゃんの審査に合格した。その後子母澤さんには「座頭市」の新編を書くことも許された。

中村竹弥が近藤勇、戸浦六宏が土方歳三、明智十三郎が沖田総司というこのドラマは、尻上がりに視聴率を高め、平均30〜40%、1回追加で最終回は50%を超えた。今では想像できない。

思い出のシーンがある。ラストのほうで肺を患う沖田が死の床に伏している。起き上がって猫を斬ろうとする。が、体が衰えて斬れない。沖田は「クソ、斬れねえ」と毒舌を吐いて刀を放り出した。カチャンという金属音がコンクリートのスタジオに響き渡った。沖田はガックリ首を落とし何も言わない。そのまま沈黙数分。これは私の脚本にはない。調整室はシーンと静まり皆息をのんだ。そのままエンディング。局の電話が鳴りだす。「すばらしい」「真に迫っている」「史実はあのとおりだったのだろう」。すべて沖田役の明智さんのアドリブだったのに。