【今週の眼】太田聰一 慶応義塾大学経済学部教授
おおた・そういち●1964年京都市生まれ。京都大学経済学部卒業、ロンドン大学大学院修了(Ph.D)。名古屋大学大学院経済学研究科教授を経て2005年から現職。専門は労働経済学。著書に『若年者就業の経済学』、共著に『もの造りの技能─自動車産業の職場で』『労働経済学入門』など。(撮影:梅谷秀司)

「ほめられ世代」という言葉がある。1月に放映されたNHKの番組で使われていたもので、1985年以降生まれの、子どもに自信をつけさせるために親がほめて育てた世代のことを指す。心理学博士の榎本博明氏はこの世代が抱える問題点を指摘し、ほめられて育ったことにより生まれる自信は本物ではなく、「もろくて不安定な自信」だと主張する。彼らはほめて育てられたせいで叱責に弱く、傷つきやすいというのだ。

番組では、ほめられ世代の新入社員への対応に四苦八苦する職場の状況が映されていた。ある会社の管理職研修では、若手社員を叱責するのではなく、うまくほめるためのトレーニングが行われていた。上司に厳しく育てられた世代からは信じがたい光景だが、若者への叱責が直ちに離職に結び付く可能性がある以上、企業のこうした対応は理解できる。

筆者が数年前に行った管理職に対するアンケート調査でも、若手従業員にどう向き合うかについての悩みが浮かび上がっていた。管理職の約4割が「若者の性格が弱くなっているので叱責しにくい」と回答。約2割が「指導がパワーハラスメントと受け取られないか心配している」と答えた。

その一方、若手社員に対する調査では、今の上司に対して「丁寧に指導してほしい」「気分のムラを示したり感情的になったりしないでほしい」という希望が多く挙げられており、「叱責は嫌だが指導は丁寧に」という今の若手社員の希望がうかがえる。