「19時10分くらいに先生が来られますので、少々お待ちください」

私はある媒体の企画で、とある高名な方と対談をするために、出版社の応接室にいた。対談をまとめてくれるライター、カメラマン、担当編集者の方と歓談しながら弁当を食べていたが、約束の時間を10分ほど過ぎると、編集者が壁の時計を見ながら言った。

「ちょっと遅いですね。今日だったっけ? だなんて、先生、今頃晩酌中だったりして。ハハハ」

応接室の全員は、ブラックジョークとして笑い、話を続けていた。

19時半になると、編集者が「先生は時間に正確な方なんです。おかしいな」と言ってパソコンでメールを打ち始めた。

すると、その編集者は「うっ」と小さなうめき声を漏らした。顔色がみるみる変わっていく。私は病気やケガでもないのに顔色が青白くなっていく人を初めて見た。「血の気が引く」とはまさにこのことだと思った。