2016年11月、新入社員の過労自殺事件が起きた電通本社を家宅捜索する労働基準監督官たち(共同通信)

電通で起きた新人女性の過労自殺事件をきっかけに、労働基準法などに基づいて企業を指導・監督する労働基準監督官に注目が集まっている。大手企業を次々と書類送検する過重労働撲滅特別対策班(かとく)の動きに、企業は戦々恐々としている。現状を現場の監督官はどう見ているのか。現役監督官3人に話を聞いた。

【 労働基準監督官 】
労働条件の確保・向上などを任務とする厚生労働省の専門職員。都道府県労働局や管下の労働基準監督署を中心に配属されている。

【 過重労働撲滅特別対策班 】
全国的な大企業の違法な長時間労働の調査を専属で行うため、東京と大阪の労働局に設置された。通称「かとく」。今年4月には厚労省本省内に「過重労働撲滅特別対策室」を設けた。

Aさん…50代男性(東日本)
Bさん…40代男性(首都圏)
Cさん…40代男性(西日本)

──電通事件が監督現場に与えた影響は。

Aさん 非常に大きなインパクトがあったと思う。臨検監督に入ると、企業側が相当ナーバスになっているなと感じる。

Bさん 大変痛ましい事件だったから、過重労働をなくしていくべきという世論の後押しを強く感じている。この半年で現場としては動きやすくなった。政策立案を担う本省(厚生労働省)も積極的になっている。ご遺族の記者会見をきっかけとした世論の盛り上がりがなければ、電通を書類送検するところまでは、とてもいかなかったと思っている。

【 臨検監督(臨検)】
事務所や工場など職場の状況を把握するために行う立ち入り調査のこと。法令違反が認められた際は是正を勧告する。指導に従わないなど悪質な事案では逮捕、書類送検することもある。

【 過重労働 】
労働時間の長さや不規則性、ノルマから総合的に判断される。なお「過労死ライン」とされる時間外労働(残業)時間は、月100時間、または2〜6カ月平均で月80時間。

Aさん ナーバスになった企業の対応は二分される。「協力しないと大変なことになる」と丁寧に対応する企業がある一方、以前にも増して激しく抵抗する企業も少なくない。

Bさん 弁護士を前面に立てて徹底抗戦する企業もあった。書類送検されて社名が公表されるようなことになってはたまらないと。

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