人民元の興亡 毛沢東・鄧小平・習近平が見た夢
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よしおか・けいこ●朝日新聞編集委員。1964年生まれ。岡山大学法学部卒業。89年朝日新聞社に入社。和歌山、大阪、東京で取材の後、対外経済貿易大学(北京)で中国語研修。2013年3月まで計7年中国(北京・上海)特派員。17年5月からバンコクを拠点に中国とアジアの取材を続ける。

通貨を切り口に紡がれる 人間と国家の大河ドラマ

評者 北海道大学大学院教授 遠藤 乾

本書は、緻密な取材で定評のある中国専門記者による、渾身のノンフィクションだ。

切り口は通貨・人民元。紡がれているのは、人間と国家の大河ドラマである。

人民元という「空飛ぶ絨毯」に乗り、取材先は日中英米はもちろん、果てはグルジア、テルアビブまで。

焦点は三つ巴。第一は、中国における国家建設、権力集中の歴史である。「瓜分の危機」にある分裂ぎみの「中国」では、抗日戦争期に60以上の貨幣が出回っていた。チベットの独自通貨は進駐後まもなく放逐。集権化の下、人民元が中国史上初の統一通貨となった。それでも、今の第5世代の人民元が流通し始めたのは、20世紀末のこと。従来さまざまな意匠が使われていた紙幣に毛沢東の肖像画がすわり、やっと国家像が見定まったように映る。将来的には一国二制度の下で流通する香港ドルの行方が注目される。