日本の社会保障の特徴は「家族」が大きな役割を果たしてきた点にある。たとえば介護だ。2000年に公的介護保険が導入されたとはいえ、要介護者のいる世帯に「主たる介護者」を尋ねると7割が「家族」と回答している。

他国を見ると、スウェーデンのように、主に「政府」による社会保障制度によって生活上のリスクに対応する国がある(図表1)。また、米国では、「家族」でも「政府」でもなく「市場」から、本人が自己負担で介護サービスを購入して対応する傾向が強い。慶応義塾大学の権丈善一教授は、家族、政府、市場といった福祉の提供主体から福祉国家を三つに分類し、日本を「家族依存型」と指摘する。この分類は、日本の社会保障の特徴をわかりやすく示している。

[図表1]
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日本では家族が大きな役割を果たしてきたため、政府が支出する社会保障給付費の支出規模は低い水準にある。一般に高齢化率が高い国は、社会保障費の規模も大きくなる傾向が見られるが、日本はそうなっていない。社会保障給付費よりもやや広い概念である「社会支出(対GDP〈国内総生産〉比)」と「高齢化率」をクロスさせてみると、日本の高齢化率はOECD(経済協力開発機構)33カ国中トップであるというのに、社会支出の対GDP比は全体的な傾向を示すラインを大きく下回っている(図表2)。

[図表2]
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ところが、日本の家族依存型の社会保障は現在、岐路に立たされている。世帯規模が小さくなって、世帯内の支え合い機能が従来よりも弱くなっている。その象徴が単身世帯の増加だ。単身世帯は、必ずしも家族のいない人ではないが、少なくとも同居人はいない。世帯内の支え合い機能が弱くなる中で、家族に依存してきた日本の社会保障は、どのような支え合い構造を築いていくべきか。単身世帯の増加の実態と単身世帯の抱えるリスクを見たうえで、求められる支え合い構造を考える。