安倍晋三首相(右)に労使合意文書(左下写真)を渡す、経団連の榊原定征会長(左端)、連合の神津里季生会長(左から2番目)(時事)

「労働者側、使用者側が合意を形成しなければ、残念ながらこの法案は出せない」。2月14日に開催された、第7回働き方改革実現会議。会議終了時のあいさつで首相の安倍晋三は断言した。

同一労働同一賃金と並ぶ働き方改革の主柱の一つ、残業時間の上限規制の内容について、労使で合意するよう強く求めたものだ。政府高官は、「首相の発言は連合の神津里季生会長に向けて決断を迫ったものだ」と語る。

伏線となったのが、2月1日の第6回会議での神津の発言だ。「上限時間について、1カ月100時間などは到底ありえない」。すでに根回しを受けていたとはいえ、神津にはこう発言せざるをえない事情があった。繁忙期の残業時間の上限を月100時間とする政府案を1月下旬から報道各社が報じる中、「忙しければ過労死ラインの月100時間の残業は当たり前と皆が思うのはとんでもない」と感じていたためだ。「発言が目立つのは会議の場しかない。後がどうなろうと言っておくべきだと判断した」。

3月13日、結局神津は「100時間」を受け入れ、経団連会長の榊原定征とともに、安倍に労使合意文書を手渡した。安倍の裁定で連合のいう100時間「未満」(経団連は100時間「以内」を主張)に落ち着いたが、過労死ラインに同意したことへの風当たりは厳しい。