前回に引き続き、永田町(政界)と霞が関(官界)の間で流通する独自のレトリックをいくつか紹介する。

たとえば「○○局長は忙しそうだな」と有力政治家が言ったとする。これを日常言語に翻訳すると「おまえはほかの政治家のところばかり回っていて、俺を軽視しているな。おそらく『忙しいので』と言い訳するであろうが、社会人は誰だって忙しい。忙しい中、優先度の高い政治家から説明に回る。俺のところに来ないのは、俺の政治力がないと思っているからだ。よくわかった。そのうち人事に介入しておまえの出世を妨害してやる」というような意味だ。

ちなみに、外交の世界で面会申し入れを「多忙につき、遠慮させていただく」というような形で断るのは極めて無礼だ。「あなたと会う時間は無駄だ」という意味になるからだ。

ほかにも、有力政治家が「ほかの政治家を大切にしてください。俺は『一山いくら』の扱いで構わないから」というようなことを言ったとする。この政治家はかなり怒っている。日常言語に翻訳すると「俺を影響力のない政治家と思っているな。それだから、1年生議員や野党議員に対するのと同じような説明しかしない。よし、それならば俺にも考えがある。次の予算と定員では、おまえの役所に手を突っ込んで、バッサリ斬ってやる。そのときになって泣きついても遅いからな」というような意味だ。

過剰反応が忖度を生む

もっとも中央官庁でも、政治家と日常的に接触するのは局長以上の幹部だ。それだから、中央省庁の幹部は、政治家のレトリックに対して過剰なほどに敏感になり、そこから忖度(そんたく)が生まれる。朝日新聞の都築和人記者が忖度についてこんなことを書いている。