政治学者である杉田敦・法政大学教授は、最近の憲法9条改正論に反対を唱える。

「国論はまだ二分。
政治家主導での9条改正論議には反対」

法政大学教授 杉田 敦
すぎた・あつし●1959年生まれ。東京大学法学部卒業。96年から現職。専門は政治理論。著書に『権力論』『境界線の政治学』『政治的思考』『安保法制の何が問題か』(編著)など。(撮影:今井康一)

──安倍晋三首相の改憲案表明をどう見ましたか。

憲法を改正すること自体が目的であるかのような印象を受けた。衆参両院の憲法審査会で議論されているが、まだ論点の絞り込みにも入っていない。その中で、「2020年の施行を目指す」と、期限を切るのはなぜか。安倍首相の在職中に憲法を改正したいからとしか受け取れない。20年の東京五輪開催に合わせて改正しなければならない理由など特にない。

また、安倍首相の改憲案は、特定の会合へのビデオメッセージと、特定の新聞によるインタビューという形で示された。記者会見などで広くさまざまなメディアを通じて国民に語りかけたわけではない。その点で、特定の集団と組んでいるという印象を与えた。選別するかのような提案には違和感がある。憲法9条の改正は賛否が分かれる問題だ。賛成してくれそうな集団にまず伝えたということは、分断を前提としているように感じる。

「違憲論あるので改正」はご都合主義の議論

──自衛隊を憲法に明記するという内容はどう評価しますか。

条文がどうなるかが示されないと評価はできない。ただ一般論として次の二つのことがいえる。

まず、安倍首相は、多くの憲法学者の間で違憲論があるから憲法を改正しなければならないと述べた。これは非常におかしな話だ。自衛隊は合憲だという解釈を政府はずっと示してきた。14〜15年の平和安全法制をめぐる議論のとき、多くの憲法学者が集団的自衛権は違憲だと指摘した。そのときは無視したのに、9条改正をめぐっては、憲法学者が違憲だと主張するから憲法を変えなくてはいけないとするのは、ご都合主義の議論だ。