理屈では正しい表現をしているにもかかわらず、受け入れられないことがある。このような状況について、理科系の人々が先鋭的な問題意識を持っている。サイエンス作家の竹内薫氏はこう説明する。

〈論理は、いわゆる理系人間の利点、アドバンテージだと言えるのかもしれませんが、新製品の発売を決定する社内会議で、エンジニアが論理的にポイントをおさえた完壁なプレゼンをしたとしても、会議の参加者の心を動かすことができず、製品化のゴーサインが出なかった、などという話がよくあります。

人間はもともと恐怖や喜びなどの感情によって生き残りを図ってきた動物なので、感情的にしっくり来ないものを直感的に避けてしまう傾向があるのです。そのため、エンジニアのプレゼンに対して、「話の筋も通っているし、なるほどもっともだ」と頭では理解、納得しても、もう一方に「コレ、なんとなく買う気にならないんだよね」という心の声があると、多くの人は最後にはそちらを優先してしまいます。

しかし、この「なんとなく」こそ、まさに感情と論理の狭間にあるもので、それこそが会議で究明しなくてはならないものであるはずです。〉(竹内薫『文系のための理数センス養成講座』新潮新書、2017年、88~89ページ)

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