[記事のポイント]

(1)中東の国際政治を規定するのは米国だが、トランプ政権はその発言やシリア攻撃で見せた態度とは裏腹に中東への介入に消極的になる

(2)米国はシェール革命により中東の石油を必要としなくなったこと、兵士の死傷で米軍が傷ついていること、「ロシア疑惑」で余裕がないことが理由だ

(3)中東のIS掃討作戦は最終段階にある。IS後の米国不在の中東では、事実上の自治地域を確立したクルド人の動向と、イランの影響力拡大が注目される

 

6月3日、英ロンドンで、イスラム過激派によるものとみられるテロが発生し、少なくとも7人が死亡した。ロンドンでは3月に続く惨事だ。いずれもテロ後にIS(「イスラム国」)が犯行声明を出している。ISの活動拠点は中東のイラクとシリアにまたがる地域である。中東の混乱が世界を恐怖に陥れつつある。

中東でいちばん影響力のある国は、中東の国ではなく米国だ。米国の動きが中東の国際政治を規定する。ブッシュ(子)元大統領時代に米国はアフガニスタンとイラクで戦争を始めた。逆にオバマ政権は、軍事力の行使には消極的であった。

それではトランプ政権は中東でいかに行動するのだろうか。オバマ政権のように慎重になるのだろうか。それともブッシュ政権のような「積極性」を見せるのだろうか。

トランプ米大統領は5月下旬にサウジアラビアを訪問し、イスラム諸国の首脳らと国際会議に臨んだ(AFP=時事)

5月下旬、トランプ米大統領は、就任後初の外遊先として中東を訪問した(図表1)。米大統領の初外遊先は隣国のカナダやメキシコが通例である。あえてサウジアラビアやイスラエルを訪問したトランプ氏に、中東への関与を強めるつもりがあるのではないかと見る向きもあった。

[図表1]
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だが、結論から言えば、トランプ氏はオバマ氏と同様、中東への関与には消極的になるとみられる。その根拠は三つある。