協力する種:制度と心の共進化 (叢書《制度を考える》)
協力する種:制度と心の共進化 (叢書《制度を考える》)(エヌティティ出版/453ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
Samuel Bowls●米マサチューセッツ大学(アマースト校)名誉教授、米サンタフェ研究所アーサーシュピーゲル研究教授・行動科学プログラムディレクター。1939年生まれ。
Herbert Gintis●米マサチューセッツ大学(アマースト校)名誉教授、ハンガリーのブダペストにある中央欧州大学教授、米サンタフェ研究所外部教授。1940年生まれ。

偏狭でない利他主義の社会は可能かを問う

評者 北海道大学大学院教授 橋本 努

1970年代にラディカル政治経済学の旗手として名をはせたボウルズ氏とギンタス氏。二人は90年代以降、「協力の進化」と呼ばれる新たなテーマに取り組んだ。その成果となる本書は、自然科学と社会科学の諸学を越境して生み出された学際的な金字塔。スケールの大きさといい、ビジョンの深遠さといい、たぐいまれな達成である。さまざまなシミュレーションモデルを組み立て、共同性をめぐる人類史を実証的に再構築するという壮大な試みだ。

特に興味深いのは、人間の利他心と集団間の戦争が同時に進化してきたという主張である。本書のシミュレーションモデルでは、人類はおよそ最初の300世代までは、利他主義者が少なく、他者に寛容な利己主義者が多かった。しかしそのために戦争も少なかった。ところが3万世代を少し超えると、突然「他の集団に対して好戦的な利他主義者」が増え、戦争も多発するようになる。集団間で戦争による淘汰圧が上昇し、偏狭な利他主義者の多い集団が生存競争に勝ってしまう。

シミュレーションをさらに繰り返していくと、システムの均衡点は二極化する。一つは偏狭な利他主義者たちが支配する集団同士の戦争状態。もう一つは寛容な非利他主義者たちが支配する集団間の平和状態である。

そこで著者たちは問う。偏狭ではない利他主義の社会はいかにして可能なのかと。