来るコンピューティング時代を予見した男が、日本の電機産業にいた。ソニー元副社長、久夛良木健。プレイステーション(PS)の生みの親である。PSは現在もゲーム機としてソニーに巨大な収益をもたらしているが、久夛良木氏の構想したPSはゲームの枠を超え、あらゆる娯楽とコミュニケーションの場となる次世代コンピュータだった。そして独自の半導体が、時代に対して早すぎたその構想を実現するカギだった。

PS1(1994年発売)から独自開発のプロセッサーを搭載し、PS3では超高性能の次世代プロセッサー「Cell(セル)」の開発・生産に巨額を投じた。セルは経営的には必ずしも成功したとはいえないが、今の超コンピューティング時代を示唆する挑戦だったという評価もある。半導体の未来を予見した鬼才はかつて何を夢見て、今、何をその視野にとらえているのか。

サイバーアイ・エンタテインメントCEO 久夛良木 健
くたらぎ・けん●1975年、電気通信大学卒業後、ソニー入社。情報処理研究所などを経て、93年ソニー・コンピュータ・エンタテインメント(SCE)設立に参加。99年にSCE社長、03年ソニー副社長、07年にSCE会長を退任。09年に同社設立。(撮影:尾形文繁)

──PSの登場から22年。ゲームもコンピュータも半導体も、大きく変わりました。

PS1の発売はウィンドウズ95の前年。インターネットはまだ普及していなくて、ピーヒョロロってダイヤルアップでパソコン通信に接続していた。PS2を発売した2000年でも、ネットの常時接続のようなサービスはなかった。そんな時代だったけれど、PSという端末がネットにつながり、ユーザーの手元に存在する必要がなくなる時代が遠からず来ると思った。

できてから何十年かしか経っていないネットワークの発展ぶりをみると、コンピュータとネットのパラダイム変化が起こると確信したし、それを僕ら自身で起こしたかった。

──どんな変化ですか。