今年から150年前は慶応3(1867)年に当たる。10月14日に将軍・徳川慶喜による大政奉還が行われ、12月9日には王政復古が宣言された。武家政権である徳川幕府は消滅した。子供がこのことを暗記するために、西暦との語呂合わせで「いちやむなしく大政奉還」とつぶやいていたのを覚えている。

明治維新前夜のこの年に、維新実現に努力した3人の志士が死んだ。高杉晋作(4月14日、数え年29歳)、坂本龍馬(11月15日、同33歳)、中岡慎太郎(11月17日、同30歳)だ。高杉は病死、坂本と中岡は暗殺された。ある雑誌から、「3人の没後150年記念特集を組みたい」という注文が来た。3人には私なりの思いがある。

高杉についてはその辞世。伝えられるのは、気息奄々(えんえん)だった彼は「面白きこともなき世を面白く」と詠んで、「もういい」と言って下の句を詠まなかった。枕頭にいた福岡の勤王女性、野村望東(もと)尼が「住みなすものは心なりけり」と補足した。高杉は「面白いのう」と言ったそうだが、本当にそうか。私は上の句だけを伝えてほしかった。望東尼の下の句が面白くも何ともないからだ。「世の中すべて心の持ち方次第」という発想は、“暴れ牛”に例えられていた狂挙の主・高杉から最も遠いものだ。「面白いのう」は彼の最後のリップサービスだと思っている。