
厳しい消費環境でも、業績を伸ばしてきたコンビニエンスストア業界。だが、人手不足や人件費上昇の影響が徐々に色濃くなっている。
業界内では24時間営業を見直すべきとの声も出始めた。大手コンビニ首脳は24時間営業について「1社だけで決める話ではなく、業界全体として本気で向き合わなくてはいけない時期に来ている」と強調する。
そんな声に業界のガリバー、セブンーイレブン・ジャパンはどう応えるのか。古屋一樹社長を直撃した。

ふるや・かずき●1982年入社。2004年常務取締役リクルート本部長、09年副社長を経て、16年5月から現職。(撮影:田所千代美)
──今年9月から加盟店から受け取るチャージ(経営指導料)を1%減額することを決断した。セブンがチャージ率の見直しに踏み切るのは1973年の創業以来初めてのことだ。
約1年前から議論してきた。店の売り上げも伸びてきたが、人件費はそれ以上に上昇している。さまざまな方法を検討したが、チャージ1%減額が加盟店に対して公平かつ平等という結論に至った。この施策で加盟店1店当たり月6.5万〜7万円の負担減になる。人件費の補塡だけではなく、従業員が働きやすい店づくりにも使ってほしい。
──今回の減額措置では支援が不十分、という加盟店の声も聞こえてくる。
現在約1.9万店を展開し、その店舗をおよそ1.3万人の加盟店オーナーが支えている。いろんな意見があって当然。ただ報告を受けているかぎりでは、総じていい方向にとらえてもらえているようだ。
──チャージ減額に関するリリースには“当面の間”実施すると記されている。
基本的にはずっと続けていく。エンドレスだ。
──これまでセブンは既存店売上高が57カ月連続で前年同月を上回るなど好調だが、2017年度の営業利益は2440億円と横ばいの見通しとなっている。
今回の加盟店支援は半期だけで80億円の負担となる。広告宣伝も積極的に行う。経費増になる部分を除けば、100億円以上の増益は可能だ。勢いが弱まっているわけではない。
──コンビニ事業はセブン&アイ・ホールディングス(HD)全体の8割超の利益を稼いでいる。チャージ減額に踏み切るのには葛藤があったのでは。

グループの利益バランスはあくまでHDが見ること。私はセブンの代表として、加盟店の利益を確保する必要がある。
今のHDのトップが井阪(隆一)社長というのも大きかった。井阪さんがセブンの社長、私が副社長の時代からチャージ減額について話し合ってきた。そうした流れもあり、HDに快諾してもらえた。今回のチャージ減額で絶対に利益を落とさないということはHDと約束した。