[記事のポイント]

(1) 戦闘で困るのは民間人との区別がつかないときだ。相手は国際法上の戦争犯罪になるよう、わなを仕掛けるように攻撃してくる。

(2) 責任を取るつもりで部下に命令しても、何か起こったときに指揮官が責任を取る法体系じゃないでしょう?(伊勢崎)

(3) そう、部下個人の責任になってしまう。だからお前の判断でやれ、俺はいっさい責任を持ってやれないよ、と言っていました。(伊藤)

 

元特殊部隊員の伊藤祐靖氏と、武装解除の専門家である伊勢崎賢治氏が、自衛隊、戦争、PKO(国連平和維持活動)をめぐって白熱の対話を行った。

伊勢崎 まず南スーダンの日報問題から論じましょう。あるはずの日報がないとされ、よく探してみたらありました、というお粗末な件です。

どんな国であれ軍事組織は必ず過失を犯します。日本のような平和な国に駐留していても米軍は過失を犯すのだから、それが戦場で起きないわけがない。交戦時における軍事組織の過失は、戦争犯罪に該当するかどうかを国際法で裁きます。ところが日本は過失を犯す前提なしに海外に自衛隊という軍事組織を送っている。そのめちゃくちゃさがわかっていない。だから、日報を隠すようなことさえ起こるわけです。

東京外国語大学教授 伊勢崎賢治
いせざき・けんじ●1957年生まれ。国連などで東ティモール、シエラレオネ、アフガニスタンの紛争地域で武装解除を担当。(撮影:尾形文繁)

伊藤 活動報告は保存期間が決まっているはずです。

伊勢崎 隠蔽や改ざんはあっても、破棄という概念はないはず。なぜなら、後で国際問題になったとき、当時の状況ではその発砲や軍事行動がいかにやむをえないことだったかを証明しないといけない。その重要な証拠が日報ですから。軍事的過失を犯すという前提がないから、破棄という言葉が使えるんですよ。

伊藤 船では走り書きのメモも3カ月は保存します。航海日誌は30年保存です。破棄はわれわれの習慣にはない。言い出したのは防衛省のシビリアン(背広組)じゃないんですかね。

元海自2佐(特殊部隊創設者)伊藤祐靖
いとう・すけやす●1964年生まれ。日体大卒。海自の特殊部隊「特別警備隊」の創設にかかわる。私塾で現役自衛官や警察官を指導中。(撮影:尾形文繁)

伊勢崎 私もそう思う。軍人でこれをやったら本当のバカタレです。