自衛隊の幹部は、外部の人が想像するよりはるかに忙しい。巨大な組織を動かすための事務作業がたくさんあるからだ。その度合いは、陸海空の幕僚監部など中枢に近づくほど増す。厳格な階級社会の階段を上るためには、軍人としての素養に加えて行政能力が必要となる。また、高級幹部や指揮官には国際法などの知識や語学力も求められる。厳しい競争を勝ち抜いて将になるのはどんな人材か。人数がいちばん多い陸自を例に説明しよう。

8割は理系出身、出世率では文系

出世すごろくの出発点は防衛大学校。学生は大まかにいって文系2割、理系8割である。艦船や航空機を扱う海自、空自はもちろん、陸自でも特科(砲兵)、施設科(工兵)など、理系の職場は多いからだ。「その割に将官には文系が多い。偉くなるほど書類の作成能力が問われるからではないか」(陸自佐官)。

防大生は教官によって2年次で陸海空に振り分けられ、卒業後はそれぞれの幹部候補生学校に進む。3尉(少尉)に任官するときに専門を決めるが、陸自の場合は普通科(歩兵)が最大勢力。同期の3割程度を占め、将になる比率は高い。陸自で人気があるのは航空科(ヘリコプターパイロット)だが、ここから将が出る比率は低いという。「普通科では小隊長時代から部下のマネジメントに当たる。航空科だと自分の技量を上げるのに精いっぱい。そうした経験の差が出ている」(同前)。

初級幹部としての実力がつくと、次は幹部学校の指揮幕僚課程(CGS)という関門が待っている。旧軍の陸軍大学校に相当する。ここでは連隊規模の部隊指揮官や、司令部の幕僚(参謀)となるための教育を受ける。受験回数は4回に制限されており、入校できるのは幹部候補生学校同期の3割前後という狭き門だ。