金利と経済―――高まるリスクと残された処方箋
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おきな・くにお●京都大学公共政策大学院教授。1951年生まれ。東京大学経済学部を卒業。米シカゴ大学でPh.D.(経済学)を取得。74年日本銀行に入行。調査統計局企画調査課長、金融研究所長などを歴任。2009年4月から現職。専門は金融論、金融政策論、国際金融論。

懸念される財政従属への陥り

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

不況の際、金融政策の役割は金利を引き下げ将来の需要を前借りし、景気を平準化させることである。潜在成長率を高めるわけではないから効果は一時的だ。人口減で潜在成長率の低下が続く日本では、先行きの所得もあまり増えないため、前借り可能な需要も限られる。金融緩和をスケールアップしても効果は小さく、金融システムの脆弱化など、むしろ副作用が大きくなる。

本書はマイナス金利を中心に、近年日本銀行が実施した政策を分析したものだ。著者は金融政策研究の第一人者として知られる元日銀マン。理論的正確さを保ったうえで平易に論じているのが魅力で、本書の内容には概ね同意する。

まず長期停滞論と金融政策の関係。4年前に開始された異次元緩和は、国債の大規模購入でインフレ期待の醸成を試みたものだった。理論的根拠であった1998年のクルーグマン論文は、あくまで一時的な潜在成長率の低下を前提にしていた。長期停滞に陥り潜在成長率の低下が続くのならインフレ期待の醸成は難しい。そのことをクルーグマン自身認めるが、長期停滞にあるから、異次元緩和が失敗した可能性が論じられる。