社長・会長として3年。業界首位のセブンとの差を縮めることはできなかった(撮影:尾形文繁)

5月末の株主総会をもって、ローソンの玉塚元一会長が退任する。3月26日に発表された次期取締役候補の中には会長として玉塚氏の名前も入っていた。だが、4月12日の2017年2月期決算発表の直前に突然、ローソンを去ることが公表された。

「電撃退任」から1週間後。玉塚会長が社長就任後に架空融資事件に巻き込まれていたと『週刊新潮』が報じた。

もちろん融資は実行されておらず、被害者も確認されていない。ただ、玉塚会長は架空融資を企てた人物との接触や、外部に流布された「融資」に関する確認書を自らが書いたことは認めている。経営者として軽率だったことは否めない。

この事件について玉塚会長は、本誌に対し「私の慎重さが欠けていたことが原因です。多くの方にご迷惑をおかけし深く反省しています」と語った。本人は架空融資事件について「今回の退任とはまったく関係はない」と強調するが、人事発表のドタバタぶりからすると釈然としない。

この事件に関しては1年半ほど前から怪文書が流れており、その件をローソンの大株主である三菱商事も把握していた。にもかかわらず最近になって退任が急に決まった背景には、何か玉塚会長に心変わりを迫る事情があったと見るのが自然だ。

きっかけは子会社化

遅かれ早かれ玉塚会長がローソンを去るのは必然だった。最大の理由は、三菱商事によるローソンの子会社化だ。16年9月、三菱商事はTOB(株式公開買い付け)を実施し、ローソンへの出資比率を33.4%から50.1%に引き上げると発表した。総合商社がコンビニエンスストアを子会社化するのは初めてのことだ。

17年2月にTOBが完了し、ローソンは三菱商事の子会社となった。三菱商事は01年にダイエーからローソン株を買い取って新浪剛史氏(現サントリーホールディングス社長)を送り込んだが、ここにきて同社のローソン支配は大きく前進した。

コンビニ業界にはセブンーイレブン・ジャパンという圧倒的な存在があり、ファミリーマートは伊藤忠商事主導でサークルKサンクスを取り込んだ。その中で三菱商事は自社のグリップを強めることでローソンの今後に道筋をつけようとした。

三菱商事からすれば、14年に同社社長秘書だった竹増貞信氏を将来の社長含みでローソン副社長に据えた時点から、玉塚氏にはいずれ退いてもらうことが望ましかった。16年6月には当時の玉塚社長が会長に、竹増副社長が社長に昇格した。ある三菱商事幹部は「このときから玉塚さんの退任は既定路線になった」と打ち明ける。